石や岩にとても惹かれるし、描くのもとても好き。そして人間の信仰の原始。自分がこれから継続して描いて行きたいモチーフ。手始めに、日本神話に登場する岩を司る神、イワナガヒメを描こうと思った。岩とは永遠のメタファーである。
山の神オオヤマツミが二人の娘、コノハナサクヤヒメとイワナガヒメを天皇の祖先神であるニニギノミコトに二人とも嫁がせようとした。しかしニニギノミコトはイワナガヒメを見て醜いと思い、イワナガヒメだけ送り返し、オオヤマツミを怒らせた。永遠という祝福を突き返した事により、ニニギノミコトの子孫より命が限りある物となった。日本神話における寿命の起源譚だ。
この様にイワナガヒメは不遇のヒメである。物語の中で美しいとされるコノハナサクヤヒメは、堂本印象さんが描いた繊細でたおやかな日本画が有名だ。とても美しい絵だが、反発心も覚える。ステレオタイプな美しさとも言えるのではないのかと。そもそもイワナガヒメが醜いというのはニニギノミコトの主観ではないのか?それに、ニニギノミコトはその後、モラハラ発言によりコノハナサクヤヒメをも大激怒させている。ニニギノミコトがちょっとアレなヤツで見る目ないだけなんじゃないのと思ってしまう。そういう訳で、力強い美しさを持つイワナガヒメを描く事を目指した。ロケーションは高千穂峰を参考に。