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2024年5月2日木曜日

「土佐源氏」2024


2022年4月、お寺の境内にて坂本長利さんの一人芝居「土佐源氏」を観た。岡山湖畔芸術祭のプログラムによると、御年92歳。37歳から演じ続けた「土佐源氏」の1220回目の公演とのこと。目の当たりにした生ける伝説に気圧され、ただでさえ大好きな春の夜が素晴らしく彩られた。何故だか強烈に憧れてしまう生き方のひとつを体現し、2024年3月にこの世を去られたらしい。

音に聞くアルシュ水彩紙を友人が分けてくれた。長年使ってみたいなと思いながらも遊びで使うにはお高く手が出ず。衝撃の使い心地。重ねても重ねてもへたらず、濁りにくい。ついつい塗り込みがちな油絵描きにはありがたい。滲みもとても綺麗。今まで画用紙や安い水彩紙しか使った事がなかったので差が歴然だった。他にも色んな紙を分けてもらったので試し描きしたい。


2024年2月19日月曜日

「地球の質感」2023

銀座の老舗画廊、日動画廊が主催する「昭和会展」に入選しました。
S30号1点、S10号2点を出品予定です。是非ご高覧ください。

【 展覧会会期 】 2 0 2 4 年 3 月 1 4 日(木) 〜 2 5 日(月)  ※ 日 曜・祝 日 休 廊
【会場】日動画廊本店 東京都中央区銀座5-3-16

その後、名古屋・福岡へ巡回予定。
※名古屋・福岡ではS10号2点のみ展示

・日動画廊名古屋店〈2024.4/9~20〉※日休

・日動画廊福岡店〈2024.5/18~26〉会期中無休


「地球の質感」2023 (S30号)

「地球の質感 road」2023 (S10号)

「地球の質感 hike」2023 (S10号)


 高千穂峰・御鉢火山をモチーフにした連作。
噴火の跡をしっかりと感じる山を歩くのは初めてで、「地球は生きている」「地球を歩いている」という実感があった。私達は地球という生命体の細胞の一つで、すべてが繋がっているように思えた。


2024年2月3日土曜日

日本三奇その参【天逆鉾】

宮崎県都城市(みやこのじょうし)、高千穂峰の山頂に突き立てられた天逆鉾(あめのさかほこ)。坂本龍馬が新婚旅行で訪れた事でお馴染み。これを見るには往復計三時間の登山が必要。それぐらいだったらまあ大丈夫でしょうと、気楽に挑んだ。

朝。舗装された道を少し行った後、急坂&足元が大自然に。しかも霧に包まれて先が全く見えない。風も強い。登ると一足毎に足がとられて沈む。これは…怖い。視界が狭くて不安だけれど、この世とあの世の境界にいるような景色で大好きな雰囲気だった。山頂に着く頃に一気に霧が晴れ、青空バックで天逆鉾を見る事ができた。噴火で折れて、今あるものはレプリカらしいけど、それでも見られて嬉しい。下山。行きとは打って変わった景色が眼前に広がり、素直に大感動。感動すると描きたくなる。行きと帰りで全く景色が違い、二度美味しい最高の登山になった。



2024年2月1日木曜日

日本三奇その弐【四口の神竈】

  
宮城県塩竈市、陸奥国一の之宮である鹽竈神社(しおがまじんじゃ)の末社、御釜神社に「竈の水があふれない・干上がらない」「変事があると水の色が変わる」と伝わる四口の神竈(よんくのしんかま)がある。一つの直径が1m程の古い鉄製の甕で、拝観料100円を支払うと見学させてもらえる。写真は禁止だったので、鹽竈神社博物館にあったパネルを撮影。(……この写真、海水足してる様に見えるのだけど……?)これらの竈は鎌倉、南北朝時代の作だそう。
古事記や日本書紀の時代、東北地方は大和政権下に無いのであまり参考文献が無い。しかし鹽竈神社では古事記や日本書紀に登場する塩土老翁(しおつちのおじ)が祭神で、製塩方法を教えてくれたと伝わるのが面白い。モデルとなる人物がいたのかもしれないと思わせてくれる。製塩方法とは言うけれど、効率よく塩づくりをする為の製鉄技術を伝えた事がより重要なのではないかと考える。



毎年7月6日に行われる藻塩焼神事で作られた藻塩が納められたお守りがありました。塩釜神社、御釜神社のどちらでも授かれます。御釜神社は塩釜神社から少し離れた場所にありました。



2024年1月13日土曜日

日本三奇その壱【石乃寶殿】

日本三奇探訪、コンプリートしたので記して行きます。

ひとつめは兵庫県高砂市、生石神社(おうしこじんじゃ)の石乃寶殿。竜山石の岩山からくり抜いた巨大な作石。迫力があり存在も不思議で、特に古代史好きな人でなくても一見の価値あり。























石のまわりをぐるっと見て、後ろの出っ張りが家形石棺の縄掛突起と似ているなと思う。
となると600年前後に作られたものなのかな?

家に帰って播磨国風土(715年頃編纂)を開くと、印南(いなみ)の郡の条にこう書かれていた。
『原の南に作石がある。その形は家のようである。長さは二丈(約6m)、広さ一丈五尺、高さも同じぐらいである。名づけて大石といった。伝えて言うには、「聖徳王の御世に、弓削の大連が造った石だ」ということである。』
場所やサイズからして石乃寶殿の事を指すと見て良いだろう。そして聖徳太子が活躍したのは600年前後なので、デザイン的にも時代がばっちり符号。気持ちいい。

益田岩舟や牽牛子塚古墳などと照らし合わせて考えると、作りかけの横口式石槨と考えるのが順当ではある。しかしそれなら外側もここまでピシッと整えなくても良い様な気も。何を作りたかったのかはさて置き、切り出してみたものの、大き過ぎて運べなかったのかなと想像。


2024年1月9日火曜日

「塒」2023

 













タイトルは「とぐろ」と読みます。ねぐら、とも読むそう。川は道であり、道は蛇であり、蛇の道は蛇である。

古代日本の文献において、蛇はあらゆる物の隠喩として登場する。神が形を変えた存在としても頻繁に描かれる。聖書におけるアダムとイブの楽園追放エピソードでは、蛇は悪魔の化身として描かれる。動物界で蛇は群を抜いて不思議な生き物という事が世界の共通認識なのだろう。


大阪側から葛城山を抜けると大和平野の大パノラマが。そこから高田バイパスを通る景色が大好き。奈良帰省の度にわくわくキョロキョロ。二上山、畝傍山。郷愁が爆発する総合プール、でんぷん工場。いつまでも完成しない高速道路の脚。そして巨大なイオンモール。悠久の歴史を強く感じるドライブとなる。この景色を描きたいと思った。この道と時間を抱き締める存在として、蛇が頭に浮かんだ。道の行く先から空へと昇る蛇を、各地の祭で使用される藁で編んだ蛇をモチーフに表現した。


「でんぷん工場」2022


2023年11月30日木曜日

「恋なすび」2023

 


聖書に出てくるアイテム「恋なすび」。
「恋」と「なすび」という、私には遠いところにあると感じる2つの言葉が合わさっているのが気になった。調べてみると、どうやらマンドレイクと同じ物を指しているらしい。
マンドレイクはハリーポッターで初めてお目にかかった。写真で見る限り、実際の植物はそこまで印象的な見た目かな?と思うし、毒草・薬草の類は他にも色々あるだろうに、マンドレイクが不思議な植物のアイコン的存在になっているのが興味深い。





「ん」2023



塊根植物の亀甲竜、狛犬、阿字観のイメージをミックス。



 

「GATE」2020

 


奈良県五條市、源龍寺の歳時「流し雛」がモチーフ。
大豆と色紙でつくった雛人形を竹皮の小舟に乗せ、着物を着た女の子たちがそれを吉野川に放って穢れを祓うという行事。和歌山県加太の淡島神社へ辿り着くよう流しているそう。流し雛自体は各地で行われており、雛祭りのルーツと言われている。

淡島神社は人形供養の場所として有名で、2013年に『珍スポット』として訪れた事がある。
何を自分のテーマとしたいかがわからず、とりあえず変なものが好きなので変と聞けば行ってみていた頃。手当たり次第の見聞によって自分の心が反応するものがだんだんわかってきて、今はこのあたりをもっと深掘りしたら良さそうという鉱脈は見つけたんじゃないかなと思っている。あとはどれだけ手を動かせるか。


「FLOAT」2020


「すさのう」2021


風が吹いて海がさざめき、雲が太陽を覆い急展開で荒れ模様になるとき、スサノオが不機嫌になったのかなと神話の世界観で思ってみたりする。スサノオが出て来そうを動詞にしてタイトルは「すさのう」。


「イソラマル」2020



記紀には出て来ない、福岡が信仰の中心である海神。

安曇磯良(あずみのいそら)、阿度部磯良(あとべのいそら)などとも呼ばれる。太平記によると、海の中に住んでいたため貝などが張り付いた自分の姿を醜いと恥じ、神功皇后の召集に応じられなかった。しかし音楽が鳴り踊りが始まるといてもたってもいられず姿を見せ、神宮皇后の渡海を助けたという。そんなキャラクターの神。

奈良春日大社の「おん祭」にて奉納される「細男(せいのお)」という舞がある。舞というより動き…?素朴で奇妙で呪術感に満ちている。起源はわからないけれど、このような舞はこの祭にしか残っていないらしい。日本における原始的な舞の極みだと思っている。そしてこの舞のモチーフが磯良丸と伝わっているのだ。
磯良丸がモチーフと聞くと、踊りのセンスは全然ないけど踊りがめちゃくちゃ好きで真剣に取り組む姿が心を打っている、そんな舞に見えてきたりもする。なんとなく不器用そうなイメージを持っているので。

ところで古代をテーマに描く時、衣装が難しい!古代の衣服は現物がほぼ残っていないので土器の線刻画や埴輪、古墳の壁画なんかを参考にするしかない。時代考証を突き詰めると窮屈になるので、完全に雰囲気で描いてしまう(これはこれで難しい…)か、そのキャラクターにゆかりのあるモチーフを選ぶという方向性で行こうと思っている。というわけで、この磯良丸は細男の装束を用いることにした。

 

「ククリヒメ」2020



ククリヒメが神話に登場するのは日本書紀の一書のみ。(日本書紀の神代紀では「一書曰く」と前置きし、パラレルワールドが並び記される。)
イザナギとイザナミが協力して国生みした後、色々あって仲違いするクライマックスの問答シーン。そこに現れる不気味な一節。

このとき菊理媛神(ククリヒメノカミ)が申し上げられることがあった。伊弉諾尊(イザナギノミコト)はこれをお聞きになり、ほめられた。

…何を言ったのか記されていない…。
話の前後から推察するにククリヒメはイザナギとイザナミの間を取り持ち、ククリヒメの一言でイザナギは納得しイザナミとの決別を決意したのかな…?というかんじ。思わせぶりが過ぎる描写にまんまと捕まってしまった。

ここしか出番がないのにもかかわらず、全国の白山神社(北陸が信仰の中心)の祭神「白山比咩神(しらやまひめのかみ)」と同一神とされるので、奈良の神社の摂末社でもばったり出会ったりしてびっくりする。

「ククリ」は「括り」ではないかという説が役割的にしっくりくると思うので採用。
この絵を描くにあたって島根県松江市東出雲町の「黄泉比良坂(よもつひらさか)」をロケハンして来た。傍に原種の桃であるオハツモモが植えられていた。ククリヒメが抱っこしているのは奈良の平尾水分神社のお祭りで用いられるこよりがたくさん巻きつけられた翁面のお人形「若宮さん」。直接的な関連性は無いのだけど、ククリヒメに似合うと思ったので。
 

「イワナガヒメ」2021

 



石や岩にとても惹かれるし、描くのもとても好き。そして人間の信仰の原始。自分がこれから継続して描いて行きたいモチーフ。手始めに、日本神話に登場する岩を司る神、イワナガヒメを描こうと思った。岩とは永遠のメタファーである。

山の神オオヤマツミが二人の娘、コノハナサクヤヒメとイワナガヒメを天皇の祖先神であるニニギノミコトに二人とも嫁がせようとした。しかしニニギノミコトはイワナガヒメを見て醜いと思い、イワナガヒメだけ送り返し、オオヤマツミを怒らせた。永遠という祝福を突き返した事により、ニニギノミコトの子孫より命が限りある物となった。日本神話における寿命の起源譚だ。

この様にイワナガヒメは不遇のヒメである。物語の中で美しいとされるコノハナサクヤヒメは、堂本印象さんが描いた繊細でたおやかな日本画が有名だ。とても美しい絵だが、反発心も覚える。ステレオタイプな美しさとも言えるのではないのかと。そもそもイワナガヒメが醜いというのはニニギノミコトの主観ではないのか?それに、ニニギノミコトはその後、モラハラ発言によりコノハナサクヤヒメをも大激怒させている。ニニギノミコトがちょっとアレなヤツで見る目ないだけなんじゃないのと思ってしまう。そういう訳で、力強い美しさを持つイワナガヒメを描く事を目指した。ロケーションは高千穂峰を参考に。

2023年7月14日金曜日

鹿沼土


東京国立博物館の国宝展をどうしても観に行きたくて、出掛けた足で群馬県の古代スポットを巡った。
岩宿遺跡の博物館が予想を遥かに超えてに面白く、和田峠の黒曜石も買えてほくほく。今までほぼ素通りだった石器時代の基本の楽しみ方が掴めた気がする。しかも鹿沼土について学べた。古代史と園芸が重なり合うとは私得で。

鹿沼土は群馬県にある赤城山の噴火による噴出物が、偏西風に乗って東方面へと舞い落ちた物だそう。推定4.5万年前の噴火である。主な産出地はお隣の栃木県鹿沼市。
そう思うと鹿沼土の見方が変わる。園芸作業で鹿沼土を触る度に心が旅に出てしまいそう。岩宿駅から高崎駅へと向かう電車の中で赤城山を目に焼き付けようと眺めた。

群馬の主要部はまわりの火山が噴火を繰り返してきた歴史によって地層が重なり、時代区分が判断し易いエリア。相澤忠洋さんが何故岩宿エリアに狙いを定めて発掘したのかやっとある程度理解できた。

(2022.11 記述)


   


 

2023年4月12日水曜日

「石上鶏図」2019

 


読みは「いそのかみけいず」。奈良県天理市にある石上神宮(いそのかみじんぐう)にいる鶏をモチーフに描いた。
何か古くからの縁があるのかなと思いきや、誰かが勝手に神社に鶏を放ったのがきっかけだとか。ともあれ古刹に鶏が歩き回る眺めは趣があって好きだ。

石上神宮は古代史的には超超重要神社。軍事を司る物部氏(もののべし)の武器庫である。『もののふ』の語源は物部から来ている。この神社が所有する七枝刀(しちしとう)という古代の鉄剣がある。端的に言えば、古事記にはちゃんと史実が書かれているという信憑性を高める事となった古代史随一の激熱アイテムなのである。私が岡山県に移住してまず訪れた古代史スポットは赤磐市にある石上布都魂神社(いそのかみふつみたまじんじゃ)という所で、ここも七枝刀関連スポットだったりする。七枝刀大好き。

石上神宮の授与所にはこの七枝刀を模したブローチ等があり、私も授かっていてかなりお気に入り。

「獅子と天狗」2019


「剣の払い」2019

 

「獅子一頭」2018

 

「お面の目の目」2020

 


「おどる魂」2018


こちらも曽爾の獅子舞『獅子踊り』。杉の巨木にぐるりと囲まれたその麓で舞い踊るのは精霊の様にも見えてくる。寺山修司の映画『田園に死す』中の、川向こうから雛壇が流れてくるシーンが大好きで。まさにああいう世界がリアルで繰り広げられているかんじ。