2023年2月26日日曜日

「内ハほらほら」2022


一夜にして菜園が穴ボコだらけ。9月でもうモグラが来るのか…。園芸を始めたての昨年11月と12月、モグラに悩まされて気付けばモグラの事ばかり考えているわと思い、絵が描きたくなった。

昨年はニンニクとかトウガラシとか、においの強い物を時々トンネルに放り込んだりして、それが効いたかはよくわからないがその内出なくなり、直接的な被害もなかった。しかし今年は芽キャベツの畝を空洞にされて、種から育てた苗が全滅…。種まき適期は過ぎてしまったが種をまきなおした。もうちょっと真剣に対策を考えた方がいいかもしれない…。

モグラってキャラ立ちしているし、どちらかというと今まで好きな動物だったのに。園芸を始めてから認識が変わった事柄多々あり。テントウムシ、カマキリ、カエル、ミミズは友達なんだ。バッタ、コガネムシ、チョウチョは困るんだ…。でもチョウチョを見ると嬉しくなってしまうので今はまだ退治できない。躊躇しているとこっそり卵を産みつけられて後が大変になるのはわかっているけど。

タイトルは古事記の物語、ネズミが大国主に隠れる場所を教える「内はほらほら 外はすぶすぶ」というセリフより。語感が好き。

(2022.9 記述)


その後、もぐらのよく通る道に木炭(バーベキューで使うもの)を突っ込んでみたら来なくなった気がします!今の所一番効果ありです。


2023年2月25日土曜日

「くぬぎ」2016

 


青い実が好き。ここから色相環の遠い色に変化するなんて不思議だなといつも思う。人は可能性がたくさんある状況に希望を見出すと思うので、青い実を見ると未来への希望のような物を感じて好きなのかもしれない。園芸が面白いのも、未来の楽しみを仕込む行為という所が大きいと思う。

橿原神宮あたりを歩いていると青いくぬぎの実が落ちていて、それを拾って九谷焼のお皿に乗せて家で飾っていた。するとその実は予想外の順序で熟していった。実の全体が徐々に茶色くなるのではなく、濃い色がだんだん青い部分を塗り替えていく。また拾いたい、どこかに落ちていないかな。

2023年2月22日水曜日

「呉を歩く」2019


高台の神社と隣接する公園から呉の海辺の町を見下ろした情景。ごっこ遊びに興じる女の子達が愛しい。
町を歩き大きな船に圧倒されながらコーヒーが切れている事を思い出し、ゆめタウンのカルディでコーヒーを買う。お店を出てすぐの海上自衛隊資料館『てつのくじら館』がまだ開いていたので見学、機雷について学ぶ。日常と非日常を行ったり来たり。

ずっと前からもっと絵を壊したいと思っている。この作品でチマチマ描くのをやめる!と思ったのに未だにチマチマやってしまっている。何なら自分のサイトに載せている『ひとこま奈良』は、チマチマ欲はこっちで満たそうと思って始めた向きもある。壊すのって本当に難しい。


2023年2月21日火曜日

「ながれる今も」2019


毎年8月に行われる『なら燈火会』のワンシーン。逢魔時に一斉点灯。浮御堂のまわりにボートがたゆたい幻想的。夜の奈良公園界隈はすごく雰囲気が良いので、燈火会以外にも若草山焼きやお水取りなどもオススメ。じんわり暖かい気持ちになりたい夜に。
光が水に映っている様をドラマティックに演出したいあまり、少しギラつき過ぎたかな…。色も生感が強い。それがダメって事はないと思うけど自分のビジョンとはズレている。コントラストのコントロールは課題のひとつ。

2023年2月17日金曜日

「大阪観光」2015


『爆買い』のニュースが毎日流れる頃、夜の道頓堀を通りかかるとそこは異国の熱気で溢れていた。タイのカオサン通りを歩いた時のあのカンジがよみがえり、心が弾んだ。
(おそらく)中国人の兄妹が目に留まった。
おそろいのコーデがかわいい。裕福感がすごい。一人っ子政策の最中も、罰金を払えば二人目の子供を持てると聞いた事がある。
この夜の空気を背景に立つ子ども達が異様で面白く思え、情景を描いた。
 

2023年2月15日水曜日

「blue スイカ blue」2016

 


ブルーシート一面に広げられたスイカ。スイカの品質チェックの模様との事。新聞の地方欄に掲載された写真を見て、青空の下、海に漂う大量のスイカのイメージが浮かび衝動的に描きたくなった。

絶対色々植えまくるんだ!と引っ越しの少し前から園芸youtubeを見始め、まだまだ片付かない家の中を放っぽって、引っ越した2週間後に先駆けて苺の植え付けをした。苺たちは春にたくさん実をつけて、まもなく孫株の植え付け時期となる。講師は専らカーメン君。
「カーメン君ガーデンチャンネル」にて、野菜の種のネーミングセンスをやたらとイジられている種苗会社があった。チラリと種袋に書かれた住所が見える。奈良県橿原市。めちゃめちゃ地元やないかいっ。もしかして絵の元ネタ写真もナント種苗だったのだろうか。スイカの種のシェアがより多い田原本町の萩原農場という所かな?


(2022.9 記述)


 
その後…12月には「甘美人」「もものすけ」「小太りくん(ミニダイコン)」
収穫大成功しました!人参は圃場に植えっぱなしで春先までもつので重宝しました。



2023年2月14日火曜日

「窓際・人形」2012


東北地方の伝承『おしら様』がモチーフ。馬と娘の悲恋の物語が神格化。養蚕の神とされる。
…と聞いて思い起こすのは、日本神話のあのエピソード。アマテラスの機織り(はたおり)小屋にスサノオがイタズラ?で皮を剥いだ馬を投げ入れて機織り女をショック死させてしまい、この件が決定的となってアマテラスは岩戸隠れしてしまう。
これら2つの物語に重なりが見られる。

この絵は『ニヒル牛2』で個展をさせてもらった時に初めて展示した。ニヒル牛は「たま」の石川浩司さんの奥様である石川あるさんのレンタルボックスのお店。良い経験を色々とさせてもらい、関わっていたのが一年半にも満たないなんてびっくり。自分が主に作っている作品がスペースに置きづらく、それ用に小さな雑貨をつくるのが負担になってきてしまいやめることにした。ニヒル牛で出会うのはシンパシーを感じる方ばかりで心地良かった。ベタに中央線沿に住んでニヒル牛にしょっちゅう遊びに行く楽しい20代を過ごしたかった。けれどもやっぱり自分が進みたい道はガチ美術な方面で、基本的には大きな作品をつくらないとお話にならない世界。狭いアパートを借りて生活費を稼ぎながら大作をつくるなんて暮らしで、さらに遊ぶ余裕は出来るのか、本当にやりたい事からは遠ざかるんじゃないかと逡巡し、日課の様に賃貸サイトを覗いていたけれど結局上京はできなかった。音楽を心の拠り所に淡々と制作する地味な日々を送った。後悔はしていない。


2023年2月13日月曜日

「白日」2016


夏目漱石『それから』より、鈴蘭の漬けてあった鉢の水をヒロインの三千代が飲んでしまうワンシーン。
『それから』は最も好きな小説のひとつで、その中でもこのシーンが一番好き。ざわざわする。全く説明的で無く想像する画面は白く美しく、なのにここから読み取れる(想像をかきたてる)情報が多くって、本当に夏目さんてすごいわと。


2023年2月10日金曜日

「海と陰影」2018


鞆の浦散歩の情景。
綿津見神に誘われ海へと向かう小道。

奈良県出身者ゆえ、御多分に洩れず海は非日常の場所。岡山県に引っ越す時、遂に海アリ県へ移住だ!と思ったけれど、瀬戸内海へも日本海へもほぼ等距離の県北エリア。海との縁は無いみたい。これからも海は特別な場所。海を見る度、人一倍はしゃごうと思う。


2023年2月9日木曜日

ひとこま奈良



自分のウェブサイトにて、イラストと短い文章で奈良のあれこれを紹介する『ひとこま奈良』というページを設けています。
https://www.noragaro.com


コロナ以降の観光自粛、私自身奈良に全然帰れていないなど気分の盛り下がりもあり、完全に掲載ストップしてしまっていますが、まだ描きたいネタはあるので気が向いたら再開したいとは思っています。唐招提寺御影堂の拝観も今年再開した事ですし。

上のイラストは2015年春日大社の式年造替の年に後殿が140年ぶりに公開され、その際に拝観した磐座。初公開だったそう。水晶のような形の磐座が漆喰で塗り固められ、中途半端な場所にあり、春日大社の本体を見た様でゾクゾクした。撮影禁止なのでその場でスケッチしたものを整えたのがこのイラスト。

下のイラストは法隆寺上御堂(かみのみどう)にいた餓鬼がモデル。こちらもスケッチより。上御堂の特別拝観日は毎年11月1〜3日。上記磐座のことを思うと拝観難易度低く感じるけど年3日…。ただ、この3日間に行けば夢殿や大宝蔵院も公開中なので訪問日としてオススメですよ。


 

2023年2月7日火曜日

「青色」2022


青色を集めるアオアズマヤドリがモチーフ。どういうつもりでアオアズマヤドリは青色ばかり集めるのか、その真意を知りたいものです。美しく飾るという感覚を持っているのか。鳥の歌声や求愛ダンスも、美しさの基準があるのか。
美しさを求める行為がヒトだけの営みでなく、他の種も生きるために必要と感じているなら面白い。

色画用紙を切ってコピックペンで彩色、イラストボードに貼り付け。デフォルメ修行のため一度いつものノリでイラストを描いて、それを見ながらコラージュを制作。


2023年2月6日月曜日

「ごあいさつ」2021



犬や猫が何もないところをじっと見ている時は、何か見えるか聞こえるか、匂うか感じるか。何かしらそこにあるんだろうなと思っている。
生きている間に紫外線の色が見えるようにならないかな。見えない色を想像するのは至難の業だ。

モチーフは鞆の浦の路地裏を歩いている時に出会った猫。スクリーントーンを貼ってPCスキャン、少しいじってプリンタで出力した上にコピックペンで彩色。

まだ奈良に住んでいた20代の頃、気になる展示があればなるべく行くと自分に課していたので、夜行バスで何度も東京に通った。その頃、広島県福山市にアールブリュットの美術館があると知り、すぐに行く事に決めた。大好きなんです、アールブリュット。
遠いからしゃあなしで一泊するか…と行ってみたら鞆の浦がとてもいいところで。しょっちゅう遠征していたけれど、都市部にて箱から箱への移動ばかりだったので、こんなに色のある町への旅らしい旅は久しぶり。仙酔島へ渡る海ほたる鑑賞ツアーにも参加した。すごく良かった。ちょっと今まで、箱ばかりめがけ過ぎていたかもしれないと思った。

 

2023年2月4日土曜日

「起点」2021



熊野古道 小辺路(こへち)の和歌山県八木尾バス停付近からの登口。
イラストを描く時はいつも線を書いてから色を塗っていくけれど、今回は下書き無し、コピックペンで面で描いていこうという試み。最後にアクリルガッシュの白でハイライトを拾った。

平安から室町あたりの中世期、熊野は日本最大の霊場であり、貴族から庶民まで盛んに熊野詣を行った。紀伊半島に点在する霊場を繋ぐ道が熊野古道である。
その中の高野山から熊野本宮大社を繋ぐ道は小辺路と呼ばれ、私は友人と小辺路の一部を歩いた。
具体的には奈良県十津川村の果無峠登山口から和歌山県田辺市の「道の駅奥熊野古道ほんぐう」まで。
10kmほど山道を歩いて、舗装された道路に初めて出るのが八木尾。登山道から道路に下りて振り返ると、来た道は一気に異世界に入って行く雰囲気漂う入口で、印象的な佇まいだった。
 

2023年2月2日木曜日

「鳥よ花よ」2014


祖母が生けたお正月用の花の中に一際華やかなものがあり、それは極楽鳥花だと教えてもらった。そう聞いて見ると確かにもう鳥にしか見えない。葉っぱそっくりのコノハムシとか、アリやハチらしきものを乗っけているツノゼミとか、面白くて好き。


  「鳥のいる花」2015


奈良県御所市にある高天山野草園でエビネランを見て、きれいだなと近づくと、そこには鳥が。また花に鳥がいた!と嬉しくなって絵を描いた。

 

2023年2月1日水曜日

「令月風和」2020

  


タイトルは「れいげつかぜやわらぎ」と読みます。新元号記念に描きました。


『初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫す。』
(しょしゅんのれいげつにして、きよくかぜやわらぎ、うめはきょうぜんのこをひらき、らんははいごのこうをかおらす。)
大伴旅人による清く美しい文章。
この後、旅人の邸宅で酒杯を酌み交わしながらみんなで庭の梅の歌を読もう、と続く。
万葉集に掲載されるそれらの三十二首を読んでみると…もっと後の時代の「お見事!」な歌を色々と知っているゆえに、なんというか素朴な歌ばかりに感じて…失礼ながら読み終えた感想は、「柿本人麻呂ってやっぱりセンスが突出してるんだな…」。
「梅の花は散りすぎる事なく庭に咲き続けて欲しいよ」
「梅の花は今は盛り、みんな髪に挿そうよ」
とかこれぐらいの内容なんです。
しかし、俺のセンスを見せつけてやるぜみたいなギラつきを感じず、宴会の楽しそうな様子は浮かぶ。この気楽な歌会(※個人の感想です)、これぞ風流という気もしてきた。